006では、コーチの役割や選び方を説明しました。
では、実際に、コーチはクライアントにどのような働きかけをするのでしょうか。
一般的な指導者の例をみてみましょう。
たとえば、スポーツであれば、チームの目標や目指すスタイルがあり、
そのためのトレーニングメニューを監督は組み、
それを、実際の試合で実現できるように指導していきます。
指導スタイルは様々でしょうが、
多くの場合、行動主体の力点は監督にあります。
監督のかかげるゴールを選手やスタッフが理解し、選手やスタッフはそのゴールを実現することを求められます。
この力点が監督よりに強くなればなるほど、監督は命令的になり、選手やスタッフにhave to感、義務感が生まれ、ふるいにかけられるように、監督の目に叶うものだけが残る結果となっていきます。
多くの企業や行政組織、学校、病院といった組織におこりがちな現象です。
実は、こうした旧来型の組織に対し、行動主体を個々人に求める自立統合型のコーチングを導入した場合、756倍の利益向上がみられた、というアメリカの調査結果があります。
何がおきたのでしょうか。それは、
それぞれの人が自らwant toでゴールを設定し、エフィカシーを上げるはたらきかけをし、その集積として一段高い抽象度の共通のゴールにむけて個々人全体が有機的に行動したとき、圧倒的な力が発揮されるということです。
その際、まず最初に重要なのは、組織論ではなく、ひとりひとりの力を十二分に発揮することです。
つまり、前回述べた「エフィカシーを上げる」という作業をひとりひとりが実行することです。
では、コーチは、クライアントのエフィカシーをあげるために、どのようなはたらきかけをしていくのでしょうか。
ひとつは、言語のコントロールです。
人は、様々な言葉を、たとえ言葉を発しなくても心のなかでつぶやいています。
この心のつぶやきが、実は行動に大きく影響しているのです。
人は、協調的に社会活動を行うために、あるいは、外聞のために、「本音とタテマエ」を使い分けて生きています。
いくらタテマエで耳障りのいいことを言っても、本音が逆だったりするとタテマエは実現しません。
意識と無意識の戦いにおいて、本音という無意識は圧倒的に強力だからです。
「勝つぞ」といくら大声で言っても、心の中で「はやく終わらせて帰りたいなあ」とか「もうムリ」なんておもったら、試合で勝てるわけがありません。
営業先に「あなたのために」なんて口で言っても「儲けをもらったらさっさとずらかろう」なんて考えている人から他人はモノを買いません。
親や友達や先生の手前「東大合格!」なんて紙に書いても、東大で勉強したいことが何にもなければ、3日でやる気は失せます。
具体的な言語によるはたらきかけの手法には、様々な技がありますが、一例として、アファメーションがあげられます。
これは、無意識をコントロールするために、言語を使って変えていく方法です。
もう一つは、非言語によるはたらきかけです。
実は、これが苫米地式コーチングの大きな特徴です。
人間社会は言語で形成されていますが、ひとりひとりの認知は、言語を超えたイメージの世界が圧倒的に大きいのです。
そこに直接的にはたらきかけていきます。
その具体的方法論はコーチごとに理論と実践から生み出された、いわば専売特許のようなものです。コーチは、そのために様々なトレーニングを積んでいますし、そもそもコーチとは毎日毎日そんなことばかり考えているいわばブリーフシステム介入の達人です。
いずれにしても、個人によってもっている世界も、ゴールも、ゴールの中身(コンテンツ)も違うのですから、
コーチはその場その場で相手のブリーフシステムを読み取り、エフィカシーを高めたり、障害となるものを取り除いたりといったはたらきかけも、言語・非言語の方法論を織り交ぜながらその場その場で生み出していきます。
たとえ同じクライアントに対しても、毎回その場その場で生み出していきます。
昨日のその人、そのチーム、その組織は、今日のその人、そのチーム、その組織と違うからです。
もし過去のその人、そのチーム、その組織のイメージを固定してコーチングをした場合、コーチの存在そのものが進歩を妨げる障害となりかねません。
目の前のクライアントにすべてのエネルギーを注ぎ込んではたらきかけを生み出す、クリエイティブの塊のような時間をつくりだすのがコーチのはたらきかけのひとつです。
ぜひ、体験してみてください。
おまちしております。
2019年10月9日 14時13分